J-Hoopers・NCAA|5校目への移籍が意味すること、山ノ内勇登の道のりに見るアメリカ大学バスケの現実
福島県出身、日本代表候補の山ノ内勇登選手が、この夏サザン・インディアナ大学へ移籍した。日本のバスケメディアもすでに報じられているが、「移籍した」という事実だけでは見えてこないものがある。なぜ彼はここまで学校を渡り歩くことになったのか。アメリカの大学バスケでは、こうした移籍がどういう仕組みで起きているのか。現地の英語ソースを深掘りすると、日本の記事にはない景色が見えてくる。
「ずっと第一候補だった」ヘッドコーチの言葉
地元テレビ局WEHTによると、サザン・インディアナ大学のスタン・グーアードヘッドコーチは、山ノ内選手の獲得についてこう振り返っている。「彼は前から知っていた選手で、ずっと第一候補だった。一度は諦めていたが、また現れてくれた」。
移籍が決まったのは7月2日、リクルーティングのサイクルとしてはかなり遅い時期だった。それでも「待った甲斐があった」というのがチーム側の受け止めだ。山ノ内選手は7月上旬、チームの練習に初めて姿を見せている。
なぜこんなに移籍を繰り返すのか
山ノ内選手のこれまでの道のりを振り返ると、こうなる。
- ラマー大学(2022-23、1年目)
- ポートランド大学(2023-24、2年目)
- ネバダ大学(2024-25、公式戦には出場せず「レッドシャツ」として練習に参加)
- オーラル・ロバーツ大学(2025-26、32試合出場、平均6.9得点・4.2リバウンド)
- サザン・インディアナ大学(2026-27、今シーズン)
これで通算5校目。アメリカの大学バスケを知らない読者からすると「なぜそんなに移籍するのか」と驚くかもしれない。だがこれは、今のアメリカの大学スポーツでは珍しいことではない。
背景にあるのが「トランスファーポータル」という制度だ。これは、大学バスケの選手が今の大学を離れて別の大学に移りたいとき、自分の名前をポータル(登録システム)に載せることで、他の大学のコーチ陣に「移籍先を探しています」と伝えられる仕組みのこと。以前は一度移籍すると1年間試合に出られないルールがあったが、今はそのルールがなくなり、選手は在学中に何度でも移籍先を変えられるようになった。
また、山ノ内選手がネバダ大学時代に経験した「レッドシャツ」というのは、その年は公式戦に出場しない代わりに、大学での出場資格を1年温存できる制度のこと。練習や遠征には参加しながら、シーズン成績としては記録が残らない。
ただし、この「レッドシャツ」という仕組み自体、今まさに変わろうとしている。NCAAは2026年6月、出場資格のルールを大きく見直し、選手の年齢を基準にした新しい制度への移行を承認した。19歳になった年度の翌年度末までに大学へ入学すれば、原則5年間の出場資格が与えられるという内容で、これまでの「レッドシャツ」のような個別ルールは一本化される方向だ。新制度が完全に適用されるのは2027年秋入学者からで、山ノ内選手のような在学中の選手は、当面は従来ルールと新ルールのうち有利な方を選べる経過措置の対象になる。
「予備軍」にとっての意味
アメリカ挑戦を目指す日本の学生・保護者・指導者にとって、山ノ内選手のケースは示唆に富む。渡米してすぐに理想の環境が見つかるとは限らない。実際、彼は5つの大学を経験して、ようやく「ずっと第一候補だった」と評価してくれるチームにたどり着いた。
見方を変えれば、アメリカの大学スポーツは「一度の選択がすべてを決める」システムではない。合わなければ移籍して、別の場所で評価を得直すことができる。山ノ内選手の23歳という年齢、5校という経験数は、日本の感覚では驚きかもしれないが、今のアメリカでは決して特殊なキャリアではないのだ。
サザン・インディアナ大学は、オハイオバレー・カンファレンス(OVC)に所属する2025-26シーズンからの新加盟校。身長208cm、体重104kgの山ノ内選手は、フロントコートの選手層が厚いチームの中でも、今シーズンどう存在感を示すかが注目される。
出典
- University of Southern Indiana Athletics「USI Men’s Hoops announce signing of 6’10” forward」
- WEHT(Tristate Homepage)「USI men’s late addition makes first appearance at practice」
- Oral Roberts University Athletics「Yuto Yamanouchi-Williams player bio」
- RealGM「Yuto Yamanouchi-Williams Player Profile」
- NCAA.org「Transfer Rules and Eligibility」
- NCAA.org「NCAA Division I and II Age-Based Eligibility Rules: Eligibility 101」
- NCAA.org「Division I adopts age-based eligibility model」